チェッカーズのシングル全30枚について、その時代背景や曲のコード進行などの音楽的なことと共に、スージー鈴木自身の当時の思い出を盛り込んで解説した本です。思った以上に読みごたえがありました。
特に、なんで当時私がチェッカーズを好きだったのか、というかチェッカーズの人気の理由が再確認でき、面白かったです。私が好きなチェッカーズの曲は、「涙のリクエスト」に代表される、スージー鈴木が命名するところの「無国籍オールディーズ」だったのです。その定義は、以下の通り。
その歌詞の舞台設定は、(中略)アメリカのようでもあるし、東京のようでも久留米のようでもある。でも、アメリカのようでもなく、東京のようでも久留米のようでもない。
私はこの、アメリカンポップス的なコード進行や歌詞を使いつつ、ロケーションを抽象的に絞り出した音世界を「無国籍オールディーズ」と呼びたいと思う。
「無国籍オールディーズ」じゃない歌が次第に増えていき、そして完全にその世界から離れた時、もうファンじゃなくなったんだなぁと思いました。私が最後に買ったシングルCD(というものが存在したのですよ)は「運命(SADAME)」ですが、聴いて「これは違う。もう買うのは最後にしよう」と思った覚えがあります。ちょっと思うところがあって、しばらく前に久しぶりに聴いてみたのですが(シングルCDアダプターをはめて!)、やっぱピンと来なかった。スージー鈴木は、「チェッカーズをチェッカーズたらしめていたものの放棄」と解説しています。
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びっくりしたのは、シングルの売り上げ枚数的には5枚目の「ジュリアに傷心(ハートブレイク)」がピークだったということ。
「ここがピーク」と言ってしまえば「ここからは落ちる一方」ということになりそうだが、チェッカーズの妙味は、その落ち方が実になだらかで、ここから8年後の解散まで、ヒットチャートに君臨しながら駆け抜けるところにあるのだが。
このスージー鈴木の解説に、改めてチェッカーズのすごさを感じました。
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マサハルとユウジへのロングインタビューも収録されているのですが、マサハルはフミヤのことを「フミヤさん」というのに対し、ユウジは「フミヤ」と呼び捨てているのが印象的でした。二人ともフミヤより年下ですが、マサハルは同じ高校の後輩であることに加え、二人のフミヤへの思いの違いも暗示しているのかなと思ったりして。
あと、ユウジへのインタビューを読んで、記憶違いに気づかされました。私はナオユキはもともとギターだったのに、トオルが加わったことでサックスに転向したと思っていたのですが、もともとベースだったのに、ユウジの加入でお兄ちゃん命令でサックスにたそうです。
チェッカーズの再結成についてのユウジの言葉には、グッときました。
仮に残っている6人でやったとしても、それはチェッカーズではない。特にドラムスが違うと、あの音には、ならない。クロベエのドラムスがあったから俺のベースがあって、チェッカーズがあったと思っています。
ちなみに、重箱の隅をつつくような指摘ですが、107ページにがくっとするような誤植がありました。ビートルズの「ゲットバック」の解説に「全世界で1000枚以上を売り上げた」とあるのですが、絶対に違いますよね。あまりに少なすぎる(^-^;
チェッカーズファンだった方には、当時を振り返ることができるので、お勧めです。
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