三巻目にして、ようやく話が動き始めました。これまではほぼ何も動かず、何を考えているのかも分からなかった悪役の阿選ですが、その心情や、何を考えてことを起こしたのかも書かれています。
ひたすら「人物紹介を」と一・二巻の感想では言い続けましたが、さらに登場人物が増え、もはや別冊付録でつけてほしい域に達しました。というか、用語説明と合わせ、『十二国記事典』を作ってほしい。売ってくれれば、仕方ないから買いますよ、新潮社さん。
今回は悪役連の中に、「こういう人っているよな」とため息をつきたくなるのが二人いました。まずは士遜(しそん)。傍目にはとっても良いことをやっているように見えるけど、実はそれは自分のことしか考えていない身勝手な行動で、そのからくりを見抜けてしまう人間には、士遜のような存在は耐えられません。でも士遜の行動に文句をつけると、文句を言っているこっちの人間性が歪んでいるようになってしまうんですよね、はぁ……。
そして張運。自分がやった悪事についての記憶を、自分に都合よく変えてしまい、それを人に吹聴しまくる。何も知らない人は張運の言い分を信じるけど、事実を知る人は騙されず、「本当はこうだったんだ」と言う。でもそうするとその発言が、張運を貶めるためのもののようにとられ、こっちが悪者になってしまうんですよね。これまた、はぁです。
「十二国記」はこんな感じで、現実社会の暗部をいろいろな形であぶりだしており、結構読むのが辛いです。でもだからこそ、第四巻ではいろいろなことの決着がつき、とりあえずは悪が、それに相応しい報いを受けることを願っています。そうじゃないと、救いがなさすぎるので。
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第一巻・第二巻の感想は、以下の記事をご覧ください。