魅惑のマンホール、可愛い単管バリケード

日本各地・世界各地のマンホール蓋を中心に、単管バリケードも紹介します。街路樹保護盤やピクトグラム、救命ブイなど、様々なカテゴリーの記事をアップします。

『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ)~この本は何を伝えたかったのか~

私は本を読む時、読み進めるうちに加速度がつくイメージがあります。まず最初の1割くらいでその本の概要をつかみ、2割、3割と読むうちにスピードが上がり、半分を過ぎたらもう楽勝、という感じ。

 

 

でもこの本では初めてと言っていい経験を味わいました。半分近くまではするする読んだのに、そこからちょっと読み進めるのが辛くなり、読むのをやめようかとも、ちょっと思ったくらいです(結局読了したけど)。

 

理由は主人公の優子にあります。実母は事故死し、実父とは小学生の時に別れたきり、その後は義母に育てられ、途中からは義母の再婚相手(初代と二代目)と暮らすという、計二人の母と三人の父がいる、複雑すぎる生い立ちです。でも本人は至ってのんきで自分のことを不幸だとは思っておらず、嫌なことは受け流せる風穴が心に空いている、気持ちのいい子、と前半までは思っていました。それまでにも友達ともめるくだりなどで、ちょっと変な子だとは思ったけど、優子の言動の理由が小学生の時の経験にあることが明かされ、まぁ仕方がないかと納得しました。

 

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でも合唱祭を控え、二代目の義父ともめるあたりから、優子に共感できなくなりました。優子はいくつかの重大な決断をするのですが、なぜそうするのか全然理解できない。

 


 

 

実の親や育ての親による、子どもへの虐待が話題になる世相を背景に、瀬尾まいこは「育ての親でも実の親と同じかそれ以上に子どもを愛し、立派に育て上げることができる」というメッセージを込めたかったのかもしれません。でも逆に私は、とっても素直にまっすぐ育ったかのように見える優子の、奇妙な心の歪みと決定的に損なわれた部分を感じてしまいました。結果的に、この本が何を伝えたかったのか、よく分からなくなっています。