魅惑のマンホール、可愛い単管バリケード

日本各地・世界各地のマンホール蓋を中心に、単管バリケードも紹介します。街路樹保護盤やピクトグラム、救命ブイなど、様々なカテゴリーの記事をアップします。

『平成経済 衰退の本質』(金子勝)~「無力化のポピュリズム」に陥らないためには~

この本は今年の4月に出たもので、まさに平成の終わりに際し、平成の「失われた三〇年」の原因を論じたものです。主要な原因は、「第5章」の言葉を借りれば、

 一九九〇年代のバブル崩壊に伴う不良債権問題でも二〇一一年の東日本大震災で発生した福島第一原発事故でも、官民のリーダーたちの経営責任も監督責任も問えない戦後の「無責任の体系」

 です。

 

 

もちろん他にもいろいろ原因はあるものの、本当は日本の民衆は今の香港の若者たち並みに政府に抗議していいはずです。なのになぜ日本人はおとなしいのか。それは「無力化のポピュリズム」が働いているからだと、著者は指摘します。つまり、

 

 安倍政権のポピュリズムは、(中略)人々を煽る扇動型ではなく、人々を諦めさせる黙従型の衆愚政治である。安倍首相は人々を煽り動員する演説の能力を持たないがゆえに、人々が仕方ないと諦めさせるように動いている。 

 ということ。

 

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この部分を読んだ時、非常に納得がいくと共に、無力感にかられました。「ワンフレーズ・ポリティクス」の小泉純一郎や、ましてや「ビジネスマンのディール(取引)」手法(これにも非常に納得)を使うトランプも問題ですが、「無力化のポピュリズム」はあんまりだ……。

 

何しろ、政治においても経済においてもアメリカべったりだと、とんでもないことになると著者は警鐘を鳴らしています。日本の社会は様々な面で今変わらないと、本当に衰退してしまうと、繰り返し訴えています。

 

 

 

正直、読みやすい本とは言い難いです。岩波新書の読者層は、恐らく大学生から一般社会人を想定していると思いますが、結構難しい用語(主に経済用語)が説明なしで使われているので、よく意味がとれない部分も多々あります。文法的に変な表現も少なからずあるし。同じ主張をそのままの表現で、あるいは言葉を変えて、繰り返し述べているのも、分かりやすさというよりしつこさを感じてしまいました。

 

何しろ平成の終わりというタイミングに合わせて出したかったのだと思いますが、もう少し内容や構成を整理して、用語説明とかも付け加えれば、もっと読まれやすくなるのになと思ってしまいました。まぁ発行から3ヶ月で6刷までいっているのだから、充分売れているわけで、私がアドバイスをする筋合いではないとは思いますが。