以前ご紹介した、『窓から逃げた100歳老人』の続編です。
作中でスウェーデン外相のマルゴット・ヴァルストローム(今年9月まで外相を務めていた実在の人物)に、「間違った場所に間違ったタイミングで居合わせる能力に長けている」と言わしめた、101歳の老人アラン・カールソンとその仲間たちのドタバタを描いています。ヴァルストローム元外相だけではなく、金正恩、トランプ、メルケル、プーチンなども登場し、アランに翻弄されます。とりあえず北朝鮮では、発禁ものかな(^-^;
iPadでのネットサーフィンにはまり、得た知識を延々話すことで仲間たちをずーっとイライラさせ続けるアランですが、最後の最後に本当に世界を救ってしまいます。ご都合主義な展開ではあるのですが、あの伏線がここで生きるのか、と感心してしまいました。
荒唐無稽な架空の話とはいえ、異なる存在への寛容性を失った現実世界への風刺は鋭いです。ぞっとしたのは、極端な主張をする政党Aに投票する人は数少ないけど、その政党以上に過激な主張をする政党Bが登場し、政党Aが政党Bを「とんでもない主張をするやつらだ! 我々はやつらとは違う」と糾弾すれば、政党Aへの支持が伸びる可能性がある、という指摘。日本を含め、世界中の政治に当てはまりますよね……。
なお、1つだけ巻末の解説に誤りがあります。杉江松恋さんはトランプ、メルケル、プーチンをまとめて「3人の大統領」と言っていますが、本文中で繰り返し書かれているとおり、メルケルさんは首相ですね。ドイツには首相とは別に、国家元首としての大統領がいますし。「3人の為政者」と書けば良かったのに。これは編集者や校正者にも責任があると思いますけど。
あと、最後まで読んで気づいたのですが、1905年生まれのアランの年齢は作中の2017年当時、101歳じゃなく112歳なはずなんですが……。これはヨナス・ヨナソンがそう書いているにしても、それこそ解説で指摘しても良かったと思います。まぁ何せアランですから、年のとり方も世間の基準を超えているのでしょうけど。