新聞広告の新刊案内を見た時から、読んでみたいなと思っていました。いかにも荒唐無稽っぽくて、面白そうなので。でもなかなか機会がつかめず、あっという間に5年の月日が過ぎました……。
で、ようやくこのたび読んだわけですが、期待にたがわず面白かったです。自分の100歳の誕生日パーティーを前に、老人ホームの自室からスリッパ履きで逃げ出したアランですが、行きがかりで大金入りのスーツケースを持ち去ってしまい、そこから他の仲間も加わっての珍道中が始まります。
並行して語られるのが、アランが100歳を迎えるまでの人生で、フランコ、トルーマン、スターリン、金日成など、各国指導者との交流が描かれます。トルーマンのように仲良くなれた人もいれば、金日成親子のように相いれなかった人もいますが、各国を股にかけてのアランの人生の波乱万丈なこと。無名の人間と有名人との邂逅を物語っているという点で、映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」を彷彿とさせます。
政治と宗教から距離を置き、「世の中こういうもの、これから先もなるようになる」をモットーに生きるアランは、相当はた迷惑な存在ですが、なぜか憎めません。続編の『世界を救う100歳老人』もぜひ読もうと思います。
難点は2つだけあって、訳者の柳瀬尚紀はもちろん偉大な翻訳者で、翻訳であることを忘れる自然な日本語、ダジャレとかも日本語に置き換える工夫には脱帽ですが、時にやりすぎかなと思いました。たとえば、犯罪組織の名前を「一獄一会」とわざわざ訳さなくても……。あと、「ニコライ皇帝2世」とは普通言わないと思う。「皇帝ニコライ2世」が一般的ですよね。まぁそんなことは、ほんの些細なことですが。