魅惑のマンホール、可愛い単管バリケード

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『騎士団長殺し:第1部 顕れるイデア編』(村上春樹)~村上春樹の全盛期は過ぎたのか?~

2冊セット(文庫版なら4冊セット)の小説の前半分だけ、しかも全体の読了前に感想を書くのも邪道な気がしますが、書きたくなったので書きます。
 

 
発売から約1年半を経て、ようやく『騎士団長殺し』に取りかかりました。なぜか私は、村上春樹の小説は単行本の発売当時はピンとこず、文庫本化される頃に内容に納得がいくという傾向があります。だから今まで読まずにきたわけですが、夏休みの宿題として(?)読むことにしました。
 
私は本を読むのがそれほど遅い方ではないと思います。なのに単行本のこの1冊に、約2週間かかりました。つまらないというわけではないのですが、なぜか細切れにしか読むことができませんでした。集中して、一気に読むことが出来なかったのです。理由は2つあります。
 

 

1.時間軸が一定でなく、あっちにいったり、こっちにいったりする
もちろん現在の流れに過去の回想が入る小説なんて、いくらでもあります。でも今回は、時間軸が複雑に入り組んでおり、なかなか話に入り込むことができませんでした。現在、近い過去(主人公の旅行中)、遠い過去(主人公の子ども時代)、もっと遠い過去(主人公が生まれる前)という大雑把に分けて4つの時間軸の他にも、ちょっとした回想シーンが入ったりして、頭が混乱しました。
 

 
2.推敲・校正が甘い気がする
プロの小説家の文章に文句をつけるのも何ですが、表現に甘さを感じるところが各所に見られました。「こういう表現の方が良いのでは?」と言いたくなるというか。
そして矛盾点も散見されました。例えば186ページに石の描写があるのですが、「形も大きさも揃っている」と書かれた次の行に、「石の大きさはまちまちで」とあるのです。「揃っているのか、まちまちなのか、どっちなんだい!」と叫びたくなります。
私が読んでいるのは初版なので、もしかしたら読者の指摘で、訂正されているかもしれませんが。春樹さんは、そういう訂正に関しては、素直な方のようなので。
いずれにせよ、春樹さん自身の推敲、出版社側の校正が甘いような気がします。
 

 

 
妻に別れを告げられた夫、地面に空いた穴、異世界の住民、思春期の女の子、日本軍による戦争犯罪など、『ねじまき鳥クロニクル』を中心に、これまでの村上作品に共通する要素が多くあります。それ自体は、それらが村上さんの追求したいテーマなんだろうと思うので良いのですが、何となく春樹さんの全盛期は過ぎたのかもしれないという印象を持ちました。第2部読了後は、また感想が変わるかもしれませんが。